わかりにくいWi-Fi規格について初心者向けに簡単にまとめました。
これだけ理解していれば、Wi-Fiルーター、モバイルルーターにかぎらず、Wi-Fi搭載機器のカタログが読みやすくなるはずです。
Wi-Fiの世代
以前のようなIEEE○○○○○から、「Wi-Fi6」と数字で呼ばれると混乱しませんか?
どちらも同じものですが、新旧をわかりやすくするために”Wi-Fi4”、”Wi-Fi5”、”Wi-Fi6”と一般名称をつけられています。
通信速度(最大) | 帯域 | ||
IEEE802.11 | 2Mbps | 2.4GHz帯 | |
IEEE802.11b | 11Mbps | 2.4GHz帯 | |
IEEE802.11g | 54Mbps | 2.4GHz帯 | |
IEEE802.11a | 54Mbps | 5GHz帯 | |
Wi-Fi 4 | IEEE802.11n | 300Mbps | 2.4G帯/5GHz帯 |
Wi-Fi 5 | IEEE802.11ac | 6.9Gbps | 5GHz帯 |
Wi-Fi 6 | IEEE802.11ax | 9.6Gbps | 2.4GHz/5GHz帯 |
Wi-Fi 6E | IEEE802.11ax | 9.6Gbps | 2.4GHz/5GHz帯+6GHz帯 |
Wi-Fi 7 | IEEE 802.11be | 33Gbps (予想) | 2.4GHz/5GHz帯+6GHz帯 |
世代としてはWi-Fi3という言い方はなく、Wi-Fi4から始まっています。
見分け方として、11の後に”a”がつくものは5GHz帯に対応しています。
”Wi-Fi 6E”のEは、”Extended(拡張)”の略で、6GHz帯を確保することで電波が混み合った環境でも通信速度を低下させない新規格で日本では2023年以降に使える見込みです。(基本的なスペックはWi-Fi6と同じ)
ルーター側と子機側の両方で同じ規格に対応している必要がありますが、下位互換性があるためどちらかが新しい規格対応になっていても繋がらなくなることは原則ありません。
備考:変調方式として256QAM対応(11nなら64QAMまで)の場合は、11nでも最大400Mbpsまで速度が上がります。
Wi-Fiの帯域
Wi-Fiの帯域は、2.4GHz帯と5GHz帯の2つです。(近々6GHz帯が追加予定)
(特に古い機器において)2.4GHz帯のほうが使える機器が多いため、汎用性が高いです。
一方で、5GHz帯は障害物に弱いものの、電波干渉を受けづらく高速通信に向いています。
2.4GHz帯 | 5GHz帯 | |
障害物 | 強い | 弱い |
電波干渉 | 受けやすい | 受けづらい |
他の機器 | 電子レンジなどの家電 Bluetooth 近距離通信(NFC等) | Wi-Fi専用 |
屋外使用 | 屋内外どちらも可 | 屋内専用 |
※ざっくりいうと、GHzの数字が大きくなるほど直進性(指向性)が高くなり、回析効果が弱く(遮蔽物に弱い)なります。
MU-MIMO (MIMO)
MIMOとは、”Multi-Input / Multi-Output”の略で、ミモやマイモと読みます。
MM-MIMOは、”Multi-user MIMO”の略で、マルチユーザーマイモと読み、MIMOの進化版です。
どちらも、送信器と受信器間で複数のアンテナ間ごとに独立した通信チャネルを確保するマルチストリーム化技術です。
もっと簡単に言うと、アンテナが複数あり、分散して使い分けるためアンテナの本数分早くなるというイメージです。(実際にはそこまで単純な話ではありません)
MI-MIMOのメリットはWi-Fi通信の安定化と高速化ですが、デメリットもあります。
- ルーター側のサイズが大きく、デザインがゴツくなる
(複数のアンテナを6cm以上離して設置する必要があるため、アンテナが何本も突き出したデザインになってしまう) - 子機側(スマホ、PCなど)も対応していないと使えない
- 実装コストが高く、割高になってしまう。
従来型 | 1本のアンテナでルーターが一度に通信できるのは1台の子機。 (複数の子機での通信はできず、待機中となり、通信は順番待ち) |
MIMO | 複数のアンテナで送受信を分けて行うので通信が高速化。 ただし、ルーターが一度に通信できるのは1台の子機。 |
MU-MIMO | 複数のアンテナで、ルーターが一度に複数の子機と通信可能。 (ビームフォーミングを使って、電波の位相を調整して空間多重にした) |
ビームフォーミング
ビームフォーミングとは、ルーター側内蔵アンテナを子機の位置へ電波が重なるよう調整し、ノイズによる速度低下を防ぐ技術です。
わかりやすく言うと、電波は波なので、サーフィンの波乗りのようにタイミングよく乗せることでより遠くへ届ける技術です。
(詳しく知りたい場合は、マルチパスフェージングや、対策法のレイク受信について調べてみてください)
Mesh Wi-Fi (メッシュ)
簡単に言うと、Mesh Wi-Fiは、ルーターと中継機をシームレスに切り替えて使える技術です。
Wi-Fi環境を網目のように張り巡らして、Wi-Fiの死角をなくすことで、安定した通信が可能になります。
普通のWi-Fi中継機では、ルーターと中継機で別々のSSIDを使っていて、各々が途切れるギリギリまで繋がり、途切れると始めて繋がりやすい方に繋がります。
ちなみに、Wi-Fi 6対応ルーターで、Wi-Fi EasyMesh™対応ならメーカーを問わずMesh造設ができるようになっています。今後のことを考えると、多少割高でもWi-Fi EasyMesh™対応ルーターを選ぶ価値は十分にあると思います。(2022年現時点では、積極的に対応しているのはBuffalo(ほぼ全機種で対応)だけですが、NEC、NETGEAR、Linksysなども対応機種を出してきています。)
ちなみに、Mesh規格では、ルーターを”コントローラ”、中継機にあたる造設機器のことを”サテライト”や”エージェント”と呼びます。
動作モード (AP/RT)
モード名 | 別名 | 機能 |
APモード (ブリッジモード) | Access Point | Wi-Fi環境をつくる |
RTモード | Rooter | Wi-Fi環境をつくり、ネットに接続 |
WBモード | Wireless Bridge | 中継機として機能 |
オートモード | Auto | APモードとRTモードを自動で切替 |
あまり正確ではないのですが、動作モードはこのように考えると分かりやすいです。
APモード(アクセスポイント / ブリッジモード)は、Wi-Fiルーターが他にある時に中継機として使うためのモード。(回線終末装置(ONU)でルーター機能が働いている場合もAPモードにします)
RTモード(ルーター) は、LANポートにパソコンを接続してもそのままではつながらないポートでネット接続できるようにして、さらにWi-Fi環境をつくるためのモード。
もう少し正確に言うと、APモードはWi-Fiと子機をつなげるだけのモード。
RTモードはアクセスポイント機能+インターネットに接続するための処理を行うという、作業が増えるモードになっています。そのためルーターが他にある状態で、”二重ルーター”になると通信速度が低下します。
ちなみに、WBモードは中継機モードのことですが、Wi-Fi中継機を数珠つなぎにして2台使う必要がある時に、ルーターと2台目の中継機の間の中継機で使います。
主な用語&補足
・スループット:実効通信速度
・ストリーム数:車線のイメージで解説されることが多い。多いほど高速通信ができ、”4×4”と言うと受信ストリーム数:4×送信ストリーム数:4を示している。
・WPS:ボタンを押すだけで接続が完了する。BuffaloではAOSSと呼んでいる。(元々はBuffaloが開発したAOSSを業界標準化してWPSになった)
・親機:ルーターのこと。Mesh Wi-Fiではコントローラーと呼ぶ。
・子機:一般的には、スマホ、PC、ゲーム機、スマート家電などのWi-Fiを活用したい機器のこと。クライアントとも呼ぶ。ルーターと中継機のペアでは中継機を指す場合もある。
参考になる外部サイト
https://www.iodata.jp/product/network/info/base/kikaku.htm
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