Bluetooth 2.1から5.1までバージョンだけでも複数あるBluetoothの規格。
しかも、Classとかプロファイルなどの細かな規格が多く、ありややこしいですよね。
今回は、最新のBluetoothについて誰でも理解できるように、整理してまとめてみました。
[世代] Bluetooth Version (バージョン)
Bluetooth機器のスペックを見て、一番目立つのがバージョンですよね。
よく見かけるBluetooth 2.1、4.0、4.1、5.0について、まずは大まかに解説してみます。
簡単にBluetoothバージョンを理解しよう
Bluetooth 2.1 | 最初に普及した。NFC対応までは可。 |
Bluetooth 4.0 | BLEモード対応。様々なプロファイルに対応。 |
Bluetooth 4.1 | 既存モードとBLEモードを切替られる。 |
Bluetooth 5.0 | BLEモードでの通信速度の向上。 |
Bluetooth 5.1 | 方向探知機能追加。 |
Bluetoothは、基本的にバージョンが大きいほど新しく、使い勝手がよいです。
ただ、「Bluetooth4.0を選ぶ意味はない」という話を聞いたことがありませんか?
ややこしいですが、Bluetooth3.0まで下位互換があり、シングルモードで使えました。
ところが、Bluetooth4.0では下位互換がなくなり、4.0モードと3.0/2.1に対応のモードで「デュアルモード」が採用されているためです。
4.0に対応を謳うBluetoothイヤホンでも、結局のところBluetooth3.0や2.1で接続されているため、そのように考える方もいるようです。
歴代のBluetoothバージョン
1999年 | ver 1.0 | Bluetooth公開。 |
2001年 | ver 1.1 | 普及バージョン |
2003年 | ver 1.2 | 2.4GHz帯を共有するWi-Fi (11g/b)との干渉軽減。 |
2004年 | ver 2.0 | EDR対応なら、ver1.2より通信速度3倍。 |
2007年 | ver 2.1 | 最も普及。NFC対応までは可。Sniff Subrating機能。 |
2009年 | ver 3.0 | High Speed対応。ver1.2より通信速度24倍。 |
2009年 | ver 4.0 | BLEモード対応。様々なプロファイルに対応。 |
2013年 | ver 4.1 | 既存モードとBLEモードを切替。自動再接続。電波干渉軽減。 |
2014年 | ver 4.2 | BLEモードでの通信速度2.5倍に。セキュリティー強化。 |
2016年 | ver 5.0 | ver4.0より通信速度2倍、通信範囲4倍、容量8倍。 |
2019年 | ver 5.1 | 方向探知機能追加。 |
Bluetooth [smart] [smart ready]とは?
接続相手 | |||
Bluetooth Smart Ready | Bluetooth Smart | Bluetooth | |
Bluetooth Smart Ready | ○ | ○ | ○ |
Bluetooth Smart | ○ | × | × |
Bluetooth | ○ | × | ○ |
実は、Bluetoothのロゴには3タイプあります。
- ”Bluetooth”:従来型の通信のみ。
- Bluetooth ”Smart”:BLEのみ対応。
- Bluetooth “Smart Ready”:従来型の通信&BLEに両対応。
Bluetooth3.0までは従来型で、4.0からBLEモードが出て規格がややこしくなりました。
幸いなことに、売れ筋の機器ではBluetooth “Smart Ready”対応なことが殆どなので、特に気にしなくてもトラブルが起きることは少ないです。
EDRって?
”Bluetooth 2.1 +EDR”のように、バージョンの後にEDRって見かけませんか?
このEDRがないと何か困ることがあるのか、EDRで何がよくなるのか気になりますよね。
このEDRは、”Enhanced Data Rate”の略で、通常モード(BR)よりも高速伝送できるモードです。
(特に何もなくてもEDR対応の場合と、BR(Basic Rate)だけの場合があります)
BR | 通常モード (※BLE登場まで何も名前がなかった) |
EDR | 高速伝送モード |
BLE | 省エネモード |
Bluetooth Low Energy(BLE)
“Low Energy”の名の通り、省エネに特化したモードで、速度も遅め。
BR/EDRとは独立した規格で、互換性はないものの、Bluetooth規格内にあるので随時に切替をしつつ使えます。
例えば、紛失防止タグ、スマートウォッチなどでよく使われていて、通知などのデータ通信はBLEモードで行われています。
BLE規格では、最大通信速度は4.0が1Mbps、5.0が2Mbps。
意外と速度が遅い割には、オーディオ・通話データの送受信も可能と思われがちですが、省電力を重視しているため実用には耐えず、プロファイルも存在しません。
ワイヤレスイヤホンなどでは音楽再生時に通常モードで、再生の一時停止中などにBLEモードにすることで電池持続時間を長めるといった使い方をされています。
[強さ] Bluetooth Class (クラス)
Bluetoothの通信範囲(=電波の強さ)は、Classで表します。
距離 | 出力 | |
Class 1 | 最大100m | 100mW |
Class 2 | 最大10m | 2.5mW |
Class 3 | 最大1m | 1.0mW |
Bluetooth機器の主流はClass 2なので、遮蔽物なしの直線距離で10mくらいなら繋がります。
また、異なるClass同士の機器でも、弱い方のClassに合わせて問題なくつながってくれます。
例えば、Class1対応のスマホとClass2対応のイヤホンを接続すると、低い方のClass2の距離が限界になります。
[用途] Bluetooth Profile (プロファイル)
プロファイル(Profile)は、プロフィールと言うとわかりやすいかも知れません。
通信する目的に応じて用意されている手順書のようなもので、これがないと通信が成立しません。
Bluetoothで接続した機器が互いに持っているプロファイルのみが、やり取りできるデータとも言えます。
伝統的プロファイルは主にBluetooth 3.0以前で、GATTベースのものはBLE対応機器で使われます。
伝統的プロファイル (Traditional Profiles;従来型)
GAP | ”Generic Access Profile”の略。 |
DUN | ”Dial-Up Network Profile”の略。 携帯情報端末からの、ダイヤルアップ接続用。 |
FTP | ”File Transfer Profile”の略。PC間でのデータ転送。 |
HID | ”Human Interface Device Profile”の略。マウス・キーボードなどの入力装置のデータ用 |
OPP | ”Object Push Profile”の略。 携帯電話間での電話帳やスケジュール等のデータ交換用。 |
HSP | ”Headset Profile”の略。 DAP(Walkmanなど)のヘッドセットへの双方向の接続・通信。 |
HFP | 音声通話用の上位規格。HSPの機能に加え、発信・着信機能を持つ。 |
A2DP | ”Advanced Audio Distribution Profile”の略。 ヘッドホンへステレオで音声をストリーミング配信する。 ※配信側をSource(SRC)、受信側をSink(SNK)と区別します。 |
AVRCP | ”Audio/Video Remote Control Profile”の略。 ヘッドホン側からスマホなどをリモコン操作する。 |
SPP | “Serial Port Profile”の略。 仮想シリアルポートで2つのデバイスをつなぐ。 |
HCRP | ”Hard Copy Cable Replacement Profile”の略。 PCからプリンターへ接続し、印刷・スキャンを行う。 |
BPP | ”Basic Printing Profile”の略。 スマホからプリンターへ接続し、印刷などを行う。 |
BIP | ”Basic Imaging Profile”の略。 スマホからプリンターへ接続し、画像を送受信し、印刷などを行う。 |
PAN | ”Personal Area Networking Profile”の略。 2つ以上のBluetooth対応機器でのネットワーク構築。 |
VDP | ”Video Distribution Profile”の略。 ビデオ配信をするためのプロファイル。 |
HDP | ”Health Device Profile”の略。 健康管理機器へ接続するためのプロファイル。 |
DI | ”Device Identification Profile”の略。 SDPを利用し、デバイス固有の情報を提供。DIDとも。 |
GAVDP | ”General Audio/Video Distribution Profile”の略。 ビデオ・音声のストリーミング配信のためのプロファイル。 |
スマホ・PCなどで、「電話の音声」や「メディアの音声」と表示があると思います。
「電話の音声」は、HSP/HFPで、HFPが上位規格になっています。
「メディアの音声」は、A2DP/AVRCPで、A2DPは必須で、AVRCPのもつリモコン機能が追加されるといった共存関係にあります。
また、A2DP&AVRCPをまとめて、AVP(Audio/Video Profile)と呼ぶこともあります。
また、AVRCPにも世代があり、AVRCP 1.3以上なら曲名表示に対応しています。
参考:Traditional Profile Specifications (標準化団体Bluetooth SIG社)
GATTベースプロファイル (Bluetooth LE用)
BSP | ”Battery Service Profile”の略。バッテリー残量を通知。 |
FMP | ”Find Me Profile”の略。遠隔からアラームを鳴らし、装置の場所を捜索。 |
PXP | ”Proximity Profile”の略。互いの機器の距離をモニタリングする。 |
TIP | ”Time Profile”の略。時刻補正。 |
ANP | “Alert Notification Profile”の略。電話・メール着信の通知。 |
BLP | ”Blood Pressure Profile”の略。血圧計から血圧情報を伝送する。 |
GLP | ”Glucose Profile”の略。血糖値の情報を伝送する。 |
HTP | ”Health Thermometer Profile”の略。体温計の情報を伝送する。 |
HRP | ”Heart Rate Profile”の略。心拍計の情報を伝送する。 |
PASP | ”Phone Alert Status Profile”の略。 端末の着信音やバイブレータを停止するためのプロファイル。 |
HOGP | ”HID over GATT Profile”の略。 HID・DI・BSPを包括したプロファイル。マウス・キーボード用。 |
ScPP | ”Scan Parameters Profile”の略。 |
RSCP | ”Running Speed and Cadence Profile”の略。 |
参考:GATT仕様 (標準化団体Bluetooth SIG社)
[音声のみ] Bluetoothのコーデック
コーデックとは、簡単にいうと音楽データの圧縮タイプのこと。
具体的には、符号化(エンコード)&復号化(デコード)をできる仕組みになっています。
プロファイルのA2DPで対応しているコーデックが決まっていて、SBCには必ず対応しています。
最近は、Androidでは”apt-X”、iOS系機器では”AAC”に対応していることも多いです。
(Android 8.0からは、AACにも正式に標準対応)
低遅延 | 音質 | 機能 | ||
SBC | 標準 | × (約0.2秒) | × | 対応必須。 |
AAC | iOS系 | ○ (約0.12秒) | ○ | 圧縮効率向上 |
apt-X | Android系 | ○ (約0.07秒) | ○ | 低圧縮、エラー回復機能 |
apt-X LL | ◎ (約0.04秒) | △ | 低遅延版 | |
apt-X HD | ○ (約0.13秒) | ○ | ハイレゾ対応 | |
LDAC | Sony系 | ◎ (0.01秒?) | ○ |
[機能] Bluetoothで使われる機能
NFCペアリング
Bluetooth 2.1から対応した”簡易ペアリング機能”の代表が、NFCペアリング。
Bluetoothペアリングに必要な情報を書き込んだNFCタグ(チップ)にかざすだけでペアリングを完了させられます。
NFCタグは市販されていて、”NFC Tools”のようなアプリを使ってNFCペアリング用のタグを簡単に自作できます。
問題点としては、iPhoneが非対応なのと、安定性がいまいちなことも多いことが課題です。
プロトコルスタック (Blue SDK、Bluesoleil等)
Bluetoothプロトコルスタックは、Bluetooth通信をするためのプログラム部品のこと。
単体では使わないので、OSにインストールしてBluetoothを使えるようにするドライバーのようなものです。
IVT社が開発した汎用品の”Bluesoleil”や、OpenSynergy社が組込みOS用に開発した”Blue SDK”が有名。
[最新] Bluetoothの最新規格
LE Audio
2020年発表の最新規格に”LE Audio”があり、これから普及が始まっています。
LE Audioの3本柱は、完全ワイヤレスイヤホンへの対応強化、音質向上、複数機器への配信。
今までのAirpodsなどでは、片側でBluetoothを受信し、反対側へは磁気通信or電波で飛ばしていたのが、一度に両側にBluetoothで送受信できるようになります。
音質面では、”LC3 (Complexity Communications Codec)”を採用したことで、SBCと同音質ならデータ量が半減しています。
公式:標準化団体Bluetooth SIG社 技術情報 LE Audioについて
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